渋沢栄一 LOD ビューア
日記DiaryEntryDKB10010m-0401

八月十一日

日付
1902-8-11(day)

説明

八月十一日 晴、 午前八時半 朝飧ヲ畢リ 九時 過 元治 、 八十島 ヲ伴ヒ瓦斯製造工場一覧ノ為市外東隅ノ地ニ抵ル、先ツ地中電気車ニテバンクニ抵リ夫ヨリ普通ノ汽車停車場ニ於テ汽車ニ搭シベクトント云フ停車場ニテ汽車ヲ下リ瓦斯工場ニ抵ル、総支配人及各部ノ技術長等出テ迎ヒ場内ニ使用スル汽車ニテ案内ス、此工場ニテ日々製造スル瓦斯ノ量ハ石炭瓦斯五千弐百万立方尺、水性瓦斯千三百万立方尺ニシテ瓦斯溜器ハ工場内ニ五個アリト云トモ、尚各需用先ノ土地ニ設備スト云フ、副製物ハコークスノ外タール、アンモニヤ、ヒツチ其他染料ヲモ精製シ、各部局ニ適当ノ技術長アリ、石炭ハ ニユーカツソル 地方ヨリ海路ヲ輸送シ、工場附近ニ接続スルテームス河岸ニ於テ起重機ニヨリテ桟橋様ノ汽車ニ移シ夫ヨリレトルト場ニ運輸ス、レトルト場ハ拾四棟アリテ一棟ニ百弐十個乃至百四十四個ノレトルトヲ粧置ス、工場敷地ノ総坪数ハ三百ヱヽクルアリト云フ、其株金ノ高及毎年営業利益ノ模様等ハ追テ報告書ヲ寄送スヘキ筈ナレハ之ニ依テ調査スヘキナリ、一覧畢テ 午後三時 過帰宿、此日工場ノ案内ハ高田商会ナル 柳谷 氏同伴シテ百事周旋ヲ為シタリ、 午後七時 ステレー氏来訪ス、同氏ハ曾テ 篤二 来遊ノ時英学ヲ修ムル為メ雇用セシ人ナリ、此夜 兼子 、 元治 等ト共ニ夜餐ヲ供シ種々ノ雑談ヲ為ス

現代語訳

晴れ。

午前八時半、朝食を終える。

午前九時過ぎ、元治、八十島を伴い、瓦斯製造工場を視察するため、市外東隅の地へ向かった。まず地下電気車でバンクに着き、そこから普通の汽車停車場で汽車に乗り、ベクトンという停車場で下車して瓦斯工場に着いた。

総支配人および各部の技術長らが出迎え、場内で使用する汽車で案内してくれた。この工場で日々製造する瓦斯の量は、石炭瓦斯五千二百万立方尺、水性瓦斯千三百万立方尺であり、瓦斯溜器は工場内に五個あるというが、なお各需要先の土地にも設備しているという。

副製物は、コークスのほか、タール、アンモニヤ、ピッチ、その他染料も精製しており、各部局に適当な技術長がいる。石炭はニューカッスル地方から海路で輸送し、工場付近に接続するテームス河岸で、起重機によって桟橋状の汽車に移し、そこからレトルト場へ運輸する。レトルト場は十四棟あり、一棟に百二十個ないし百四十四個のレトルトを装置している。工場敷地の総坪数は三百エーカーあるという。

その株金の高および毎年の営業利益の模様などは、追って報告書を寄送するはずなので、それによって調査すべきである。

視察を終えて午後三時過ぎに帰宿した。この日の工場案内には、高田商会の柳谷氏が同伴し、万事周旋してくれた。

午後七時、ステレー氏が来訪した。同氏は、かつて篤二が来遊した際、英学を修めるために雇用した人である。この夜、兼子、元治らとともに夜餐を供し、種々の雑談をした。

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