日満支経済懇談会に際して
世紀の光『新東亜の建設』は躍々と動き始めた。今次聖戦の目的が東亜の安定を確保すべき新秩序の建設にあり、新秩序の建設は日、満、支三国相携え政治、経済、文化各般にわたる互助連環の関係を樹立することを根幹とすること、明治の佳節に政府の声明せる通りであるが、その紐帯をなすものは経済的結合てのものであらねばならない。日満支代表が相集い、胸襟を披いて、新東亜経済ブロック結成を目指して、本日より三日間にわたって開催される大阪の日満支経済懇談会こそは、この意味において極めて意義深き歴史の巨歩といわねばならない。昨年三月児玉謙次氏を団長とする対支経済使節が蒋介石と会見の際、蒋は『先年自分が日本で故渋沢栄一子爵に会見した際、渋沢子より論語を渡され、老子爵は論語の中の「己の欲せざるところを人に施すこと勿れ」という一句を示して、日支関係もかくあらねばならぬと教えられたものである』と顧みて他をいい、さらに渋沢子のために三分間の黙祷をしましょうと一同に黙祷を捧げしめたが肝腎の経済提携には一言も触れしめなかった当時を回想しつつ「時の力」の偉大なるに驚くものはひとり筆者のみでは…
渋沢栄一