ジャーリー突如滞貨糸引受延期を要求 : 契約事項相違を表面の理由に政府当局は絶対反対
契約日より三ケ月間に引受けを完了するとの条件のもとに、滞貨生糸約十万七千俵を一手に引き受けたジャーリー商会では、最近に至って突如、内地における関係店でありかつこの問題についての正金銀行並に政府当局との契約名義人たる旭シルクを通じて、右生糸の引受け期日を向う一ケ年間に延期するよう懇請して来た、その表面の理由とする処は、かかる大量の生糸を僅か三ケ月間に引受け完了するとは、一々生糸検査所の正量検査を完了しなければならぬ関係上、技術的に実行困難であるというのが一つであり、今一つはこれが買い受けに際して政府との間に取結んだ糸価維持契約条項中に入れるべく彼が最初から主張していた製糸三ケ月休業案若しくは種紙制限案等が容れられてなかった代りに、他に何等かの徹底的な市価対策を講ずる旨黙約をしたにもかかわらず、その後政府の発表している政策を見ると応急策としては繭価対策のみで、糸価維持の為に最も重要なる政策たる生産調節に関する事項は少しも顧みられていないので、かかる大量の生糸を短期間に引受ける事は到底不可能であるから、一ケ年間に延期して呉れというにある模様である、しか…
渋沢栄一