土地売払いの新傾向 : 不景気に悩む地主連 : 増額要望説が頻りに起る : 自作農創設維持資金
自作農創設維持は小作争議の激増に伴いますますその必要を痛感させているが最近に至っては農産物の下落、公課の激増から地主階級も殆ど全部の土地が担保に入っている有様で、この窮境切抜け策から東北地方地主階級には、土地を売払って転業するもの続出の新傾向現れ、山形県の本間農場、青森県の渋沢(栄一氏所有)農場の如き顕著な例で、最近農林省に向って各県から自作農創設維持資金の増額要望頻々とあるが、現行の方法にては二十五年間に四億八千万円年利三分五厘の簡易保険資金にて十一万七千百二十五町歩の自作農地を創設せんとするものにて昨今の如き全国の要望額年約一億円に対しては九牛の一毛に過ぎず、農林省は簡易保険資金の運用委員会において、これが増額を要望しているが、現内閣成立以来農業政策の一要項として公約しているので昭和六年度までにはなんらかの方法を講ずる必要あり、目下農務局に命じ実績を調査中である、地主階級の土地売払いの新傾向は最近まで小作争議の結果地主が土地上げ傾向であったのに対比し頗る注目すべき現象とされている
渋沢栄一