銀行法改正の歴史 : 最初の条例第五条を削除したのが大恐慌の因
本年三月二十九日発布された新銀行法は明年一月一日から実施する事となっている、銀行条例の創設は明治二十三年八月二十五日法律第七十二号を以って制定されたのが最初で二十四年十一月一日から実施されて以来前後七回に亙って改正されている今回はいよいよ全然廃止となって新銀行法によるものである顧れば日本の銀行業は明治維新の政治的変化に伴うて起ったもので昔は封建時代にあっては江戸大阪等の資本家等が将軍旗本大名と取引を為しその金融機関となって金を貸附などしていたのであるそれが維新の改革と共に封建制度は撤廃されて将軍旗本大名等はその影を没し従来の取引が中止され貸金も貸倒れになって、それで江戸大阪の資本家連は前後して破産しその結果として一時金融機関が全く絶えその影響を受け明治初年には金融逼迫となり物価が騰貴し茲に現代の銀行業の起ったもので偶然ではなかった当時の政府が遂に国立銀行制度を布いて我銀行業の端を開いたのは明治五年であってそれより十数年を経過した二十三年には当時としては比較的完全な銀行条例なるものが制定されたそれは恰度明治二十二年憲法発布の翌年である斯くて翌二十四…
渋沢栄一