経済界に於ける故大隈侯の功績 : 実業家の追懐談
正金の創立者 正金銀行頭取 梶原仲治氏談 大隈侯は維新以来国家の為めに勲功を樹てた稀世の人傑であることは云う迄もなく殊に侯は常に其門戸を開放して各国の来朝者を招して旺んに其気焔を昂ぐる点に於て我国交に資すること少くはない謂わば在野の大外交家であった、侯と自分との面識は左して久しいものではないが当銀行とは古き因縁がある、其れは正金の開業は明治十三年で其創立計画は侯の大蔵卿時代に為されたものである、尤も当時三田の所謂ハイカラ連の献策もあった様であるが侯は常に時勢に一歩を先ずる人で当時に於ては世人の殆ど夢想だになかった正金取引の銀行設立の必要に思い当り而も当時三百万円の資本金と云えば実に思切った大計画を企てたものである、爾来当行は諸外国に支店を設置し業務を拡張して我が貿易金融に貢献するを得たのは全く侯の賜と云うて宜い、其間当行当事者は常に侯に面識して其指導を仰いだもので自分も屡々侯の下の参じて其教を乞うて居るが其際何時も侯の談話で感ずる事は侯が時勢の推移を深く考えて日本を世界的に導こうとして居る事であって其識見の高万にして理想の高遠なる実に驚く許りで…
渋沢栄一