電灯買収二案比較 : 分割的買収案是乎 : 総活的買収案非乎 : [東京市に於ける電灯統一問題 其四十]
本紙の提唱に由りて開導せられたる電灯統一問題は市営統一を可とすとの斉論に鑑み、市理事者は民営電灯を市に買収するに決意し、渋沢森村二翁の仲介を以て既に内交渉を開始したるやに伝えらる。仄聞する所に拠れば買収案には二案あり、第一案は電灯水力不可分論に由る電灯水力を併せ買収せんとするの案にして、第二案は電灯のみを分割買収せんとする案なり。第一、二案とも現金買収にあらずして市債を発行し之に代ゆる者なるが、その報賞価格が幾何なるやは暫く措き第一案と第二案とは買収総価額に径庭あるを以て自から市債発行額に大小の差あるべきこと勿論なり。然れども既に電灯統一の為めに市債を発行することが我邦の財政経済の現状に照して可能なりとする以上は二千万円位の相違なれば五十歩百歩の論と謂わざるを得ず。但た問題は余剰水力の処分方法に繋るとせん。余剰水力の処分方法を有せずして漫に過剰の水力を背負込むが如きは他日の禍根を植うる者にして固より不可なれども、余剰水力の処分方法に関する目算確ならば第一案を採る必ずしも不可ならず。第二案は市に取りては余剰水力の処分方法を詮索するの煩累もなく、買収…