商大中止の顛末 : [奥田文相提案と商科大学問題]
商大問題は当初奥田文相が帝大側と協議を遂げたる上愈々実施する旨を高商側に通告し来りたるに対し高商側は世間に伝えらるるが如き事情のために絶対に文部案に反対し飽く迄も自説を遂行せんとしたる結果文相は之を容れずして遂に中止するの止むを得ざる旨を言明するに至りたる次第にて吾々商議員は之が善後策に就き協議したる結果余並に中野武営氏は交々奥田文相を訪問して高商側の主張を容れられんことを乞いたるも何分文相に於ても文相としての定見に依り該案を立てたるものなるのみならず仮に百歩を譲りて高商側の意見を容るべしとするも大学側の主張に反することとなり到底実行すること能わざるべしと云うに在りて吾々に於ても文相の言う所を以て尤もの次第なりと思惟し已むを得ず本問題と手を切りたる始末なり尚お其後の情勢に依って考うるも本問題は到底本年は之を実行すること能わざるべしと信ず云々
渋沢栄一