言及エントリ
日記 6九月十二日 晴 火 速十里 十月廿七日 朝御部屋廻荷物改分いたし、惣数十七之内十四箇を諸部屋へ分配し、残三ツを荷物置所へ預置 昨夜の晩餐に小遣頭の者不取計ありしか厳しくこれを糺問し、以来無落度心附可申旨相詫ひたれ免《(は脱)》し遣す 第 十一時 蘇士 出帆、風少しく波静かニ〓行平穏なり、終日〓行穏かなり、両沿に 亜弗利加 、 亜剌比亜 の諸山を見る、夜に入ては月明かに風冷しく、頗る良夜を覚ゆ
九月十三日 晴 水 速二百四十里 北緯弐十五度 東経三十弐度弐十九 十月廿八日 千三百十八里 蘇 より 亜 迄 亜丁 迄千〇六十八里 朝 六時 器械を繕ふとて暫時〓行をとゝむ、第 十二時 頃海中に二箇の小嶼を見る、其貌砲台のことし、水を出ること僅ににして《(衍カ)》四囲岩石にて其頂平坦にして土沙多し、土地極熱なれは草木はなし 夜に入て風涼しく聊苦熱を忘る 第 十時 船の左に灯台を見る、 亜剌比亜 中の小嶼にある港口の標灯なるよし 夜同舟の客中の荷人数多乗組しか舞躍相催し、舟中頗る雑沓なり
九月十七日 晴風 日 北緯十三度四十六 東経四十度三十一 速百八十九里 亜丁 迄百八十里 十一月一日 朝より逆風〓行甚あしし、午後蒸気船の東より来るを見る、時々船の右に小島を見る、風故暑気ハ稍凌よきを覚ゆ、第 三時 頃 亜剌比亜 洲の地方を左に見る、一箇の市街白壁の海岸に映するを見る、 モツカア といふ市街なり、カツフヘイの名所なりといふ、市街もいと繁華なるへく見ゆ、追々風穏かに〓行随意なり、時々両沿の島嶼を見る 夜に入ては清風涼しく、甲板上の夕涼尤清絶なり
九月十九日 晴 火 北緯十弐度四十一 東経四十四度四十八 亜 より 錫 迄弐千百三十五里 速百弐十五里 錫蘭 迄弐千十 十一月三日 朝より東北の風吹て〓行甚随意ならす、尤風故暑気は稍凌よし、時々船の左に 亜剌比亜 地方を見る、夜に入て風殊に涼し
九月廿六日 暗、 午前七時 蘇士 ニ達ス、 蘇士 ハ運河ノ終航ニシテ西 紅海 ニ接続スル所ナリ、先年余カ旅行セシトキハ此運河未タ竣功セサリシヲ以テ、 蘇士 ノ市街モ今日ト其地位ヲ異ニス、而シテ新旧 蘇士 ノ距離ハ約一哩許ナリト覚フ、本船ハ是ヨリ 紅海 ニ入リテ航行ス、時々 亜不利加 洲ト 亜剌比亜 トヲ船ノ左右舷ニ見ル、風追手ナルヲ以テ船中炎熱ヲ覚フ
九月廿九日 晴、暑気昨日ニ比シテ少ク減スルヲ覚フ、蓋シ、風ノ方向変シテ船ノ前面ヨリ吹キ来ルヲ以テナリ、然レトモ風暖ニシテ涼味ナシ、此日モ時々 亜剌比亜 地方ノ山岳ヲ左舷ニ見ル、終日読書ト雑談ノ外他事ナシ夜ニ入リテ二等船客ノ居所ヲ訪ヒ深夜マテ談話ス